怪獣の部屋
6.キングコング編
トリケラトプスのストップ・モーション・モデルをもつウイリス・H・オブライエン。この人こそ怪獣の父と呼ぶにふさわしい。 | ”シンドバッド7回目の航海”半人半蛇の女のモデルをアニメート中のレイハリーハウゼン | ジョージパル(パペトーンを開発したのはこの人)とワイヤーアーマチュアのドラゴン(”不思議な世界の物語”) |
ここでお話するキングコングは、ゴジラと戦ったコングでもなければジョン・ギラーミンが監督した底抜け超大作のコングでもない。もちろんマンガのコングでもない。1933年公開のあのオリジナル・コングについてである。(マンガ版コングは実は僕は結構好きでよく観ていた。しかし今思うと”こわく〜なんかないんだよキング〜コングは友達さ”という歌に、ゴジラと同じ過ちを犯したコングの末路が見えてくる。) ウィリス・オブライエンやレイ・ハリーハウゼンに憧れてモデル・アニメーターの世界に入ったジム・ダンフォースは、あるインタビューで次のように語っている。 「モデル・アニメーターとして個人が独立することは困難を極める。設備投資がばかにならないうえ、仕事の複雑さのわりにはあまり報われない、挫折がつきもののSFXなのだ。もし我々をモデル・アニメーションにこだわらせるものがあるとしたら、それはおそらく子供の頃に見た”キングコング”の感動なのだろう。」 |
デイヴィッド・アレンが映画博物館用に製作したコングのコピーモデル(左)。右はオリジナル |
僕は中学3年のときTVではじめてこれを観た。モノクロでかったるそうだけどいちおう古典だし、予告編でみるとコマ撮りの特撮らしいので、とりあえず押さえておこうとチャンネルを合わせたんだ。ところがどっこいである。め、めちゃくちゃおもしろい。おまけに恐竜までたっぷりでてくるし、なるほどやっぱり凄い映画だったんだ、と納得した。 ”キングコング”はすべての怪獣映画の原点となった。これがなければゴジラも生まれなかったかもしれない。 ”キングコング”で特撮を担当したのがウィリス・H・オブライエン。この人は、モデル・アニメーションとライブ・アクションを合成する多くの手法をひととおり完成させた。彼に憧れ、”猿人ジョー・ヤング”で助手になったのがレイ・ハリーハウゼンである。さらに彼らに憧れ、独自にモデル・アニメーション・フィルムを造り始めたのがジム・ダンフォース、そして彼を慕って集まったのがデイヴィッド・アレン、ダグ・ベズウィック、フィル・ティペット、ランディ・クックらである。(ちなみにそういう僕も彼らに憧れ、高校のとき8mmでモデル・アニメーションを作ったことがある。)彼らの名前は知らなくても、関わった映画の題名を聞けば、へえ、と思うはずです。 ジュラシックパークは、当初フィル・ティペットのモデル・アニメートした恐竜が暴れまわるはずだった。これがデニス・ミューレンのCGに変更されたのは皆さんもご存知のことと思います。 |
”恐竜時代”の頃のジム・ダンフォース(右) | 何かのストップ・モーション・モデルにペイント中のデイヴィッド・アレン | ”おかしなおかしな石器人”でモデルアニメート中のランディ・クック |
人と映画の話をしていて怪獣映画の話題になったとする。と中にはこんなことを言う人がいる。”ジュラシックパーク観た?凄いねぇあれ。CGだって。昔のは恐竜とかコマ撮りっていう方法で撮ってたんだよ。知ってる?あのカクカク動くやつ。もうこれからはCGだね、シージー。” てめえはビーシージーでも打ってろっ! しかし冷静に考えるとそのとおりである。でも違う。なぜか。こればっかりは好きだからとしか言いようがない。そう、好きなんです。ストップ・モーションの怪獣達が。初めて”恐竜100万年”を”アルゴ探検隊の大冒険”を観たあの至福の時間が忘れられないのです。 |
TVドキュメンタリー番組”Dinosaur!”をアニメートするフィル・ティペット(凄いという噂だが僕はまだ観てない) | PLANET OF DINOSAURS(邦題”恐竜の惑星”、ビデオのみ)ジム・ダンフォース、ダグ・ベズウィックらが参加 | ”スターウォーズ帝国の逆襲”のスノーウォーカーをアニメートするフィル・ティペット(左)とダグ・ベズウィック(右)(ジョン・バーグも参加) |
もういちど書こう。そう、すべてはキングコングからはじまったんだ。 |
(2000/1)