怪獣の部屋

23.美女と野獣編

露出度最高!キャロライン・マンロー(シンドバッド黄金の航海より) 禁断の惑星(1956米MGM/イギリス4倍判ポスター)名作の影にもエロあり。 ナイスバディ!ラクエル・ウェルチ(恐竜100万年より)
 映画は、ストーリーがおもしろい、あるいは特撮がすごい、などというだけではヒットしない。。

 これを証明したのがレイ・ハリーハウゼンの「恐竜100万年」と「恐竜グワンジ」である。両者ともハリーハウゼンの手による恐竜たちが大暴れする傑作であることは言うまでもない。その特撮はともに素晴らしく、どちらかといえば後発の”グワンジ”のほうが小技も効いて、完成度はやや高いといえよう。ところがである、興行的には”・・100万年”は大ヒットしたが、”・・グワンジ”はこけた。その理由は明確だ。もうお分かりですね。そう、”グワンジ”は色気がゼロだったのです。

 もしあなたが子供に「ねえ、これ観たい」とねだられたとする。いつもなら「おう。今度な。」と気のない返事をかえすところだが、今回は違うはずだ。だって「恐竜100万年」のポスターの”ラクエル・ウェルチ”の姿が目に入ってしまったんだからね。「おう。これか。しょうがないなあ。じゃあ連れていってやるかあ。」これに味をしめたお父さんが、次に選んだのは、はたして「恐竜グワンジ」・・ではなくて、巨乳の原始美女たちが乱舞する「恐竜時代」だったことは言うまでもない。(ポスターは”続・恐竜編”参照)

キングコング(1933米 RKOラジオ・ピクチャーズ)

狼男の殺人(1941米ユニヴァーサル)こらこら

大アマゾンの半魚人(1954米ユニヴァーサル)

吸血鬼ドラキュラ(1958英ハマープロ/イタリア版ポスター)

 これで学習したハリーハウゼンは、次作からは必ず、ストーリーとは関係なく、半裸のおねえちゃんをうろうろさせることにした。次作「シンドバッド黄金の航海」の徹底ぶりはすごい。よほど”グワンジ”がくやしかったのだろう。凄まじい露出度のキャロライン・マンローは、無理やり子供の怪獣映画につきあわされた世のお父さん達を大喜びさせた。続く「シンドバッド虎の目大冒険」でも、ハリーハウゼンはこの教訓をきっちり守るのだが、これにはちょっと無理があった。半裸のジェーン・セイモアの行く先はなんと北方浄土だったのである。「お前は寒いとこ行くのになんちゅう格好しとんねん!」

 英国ハマープロは、米ユニヴァーサルが1930年代に生み出した”ドラキュラ”、”フランケンシュタイン”、”狼男”、ミイラ男”などを、1950年代後半から次々と復活させ、世界中に第二期のホラーブームを巻き起こす。他にも「原子人間」、「怪獣ウラン」、「恐竜100万年」、「恐竜時代」、「魔獣大陸」などの特撮を数多く手がけ、ファンには、”怪奇とSFのハマープロ”、として親しまれている。同社の繁栄が、その社訓「怪奇とエロ」にあることはいうまでもない。どの作品をとっても、女優たちの露出度は異常に(!)たかい。前出のキャロライン・マンローも、「ドラキュラ’72」で鍛えられ、癖になったものと考えられる。つまり、ハマープロ作品は、どれをとっても親子で安心して観られるものばかり、と言えるであろう。

ニューヨークの怪人(1958米パラマウント)

暗闇の悪魔(1957米アメリカン・インターナショナル)

妖怪巨大女(!)(1958米アライド・アーティスツ)

金星人地球を征服(1956米アメリカン・インターナショナル)

 パンチの弱さを色気でカヴァーする、というのは映画の常套手段である。低予算になればなるほど、この傾向は一層強くなる。最下段の右から2番目のポスターを見てほしい。「美人島の巨獣」、「原子怪獣と裸女」!、多分ちゃちな映画なんだろうけど、「観なきゃ!」と思わせる何かがあるでしょう。(あるかぁ?)

 この”怪獣とエロ”という図式は、もとをたどれば、フランスのおとぎばなし”美女と野獣”に落ち着く。どんな美男子でも、そうでない人ならなおさら、必ず自分の体のどこかにコンプレックスを持っているはずだ。その象徴が野獣である。そしてそんな野獣をやさしい眼差しで見てくれる女性を、男達はいつも探しつづけているんだ。これを現代に甦らせたのが、美女を片手にエンパイアーステート・ビルを登る”キングコング”だ。旧作のヒロイン”フェイ・レイ”は恐怖に怯えるだけだったが、リメイク版の”ジェシカ・ラング”は、あきらかにコングに同情以上の感情を抱いている。僕はこの点においてのみ、リメイク版を評価する。

 怪獣には美女。この法則を守れば、あなたにもきっと大ヒット作が作れるはずだ。このとき気をつけなければいけないのがポスターの構成。怪獣が半裸の女性を抱きかかえている、というのがベストだ。たとえそんなシーンが映画の中にあろうとなかろうと全く気にする必要は・・ない。これを僕らは「お約束」とよびます。

この強引なポスターが僕は好きです。(1952米コロムビア)

よく分かってらっしゃる。(1960伊)

原子怪獣と裸女!オッケイ!(左から’58、’55、’52米)

宇宙は美女だらけ!(1953米ユニヴァーサル)

(2000/7)