怪獣の部屋

21.赤影編

 「豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だったころ、琵琶湖の南に金目教という怪しい宗教がはやっていた。それを信じないものは、恐ろしい祟りに見舞われるという。その正体は何か?藤吉郎は金目教の秘密を探るため、飛騨の国から仮面の忍者を呼んだ。その名は・・・赤影参上!」

 この山口幸生の名調子と、続く主題歌「忍者マーチ」に、僕らは毎回胸躍らせた。これが東映初のTV特撮時代劇シリーズ「仮面の忍者 赤影」なんだ。放映開始は昭和42年4月。東映といえば、もともと「ナショナルキッド」、「七色仮面」、「月光仮面」、「黄金バット」などの等身大ヒーローの老舗で、巨大ヒーロー物では一歩遅れをとったものの、この分野は得意中の得意だった。これにブーム真っ最中の怪獣を登場させ、専門の時代劇で仕上げたこの”赤影”、面白くないわけがなかった。

 今はもう廃れてしまったけど、当時はTVやマンガで”忍者物”というジャンルが確立されていた。「ワタリ」、「サスケ」、「伊賀の影丸」、TVで僕が夢中になった「少年忍者 風のフジ丸」(番組の最後の忍法解説に大興奮)などなど。恐らく僕らが、背中におもちゃの刀をくくりつけ、懐に手裏剣を忍ばせて”忍者ごっこ”をした最後の世代でしょう。

甲虫怪獣アゴン

大蟻怪獣ガバリ

山椒魚怪獣ガンダ

石像ロボット金目像

 忍者に僕らが惹かれてたわけ、それは彼らが生身の人間であるってことだ。変身もしなければ、超能力もない。武器は刀と手裏剣と、その時代の科学を駆使した忍術のみ。知力と体力の限りを尽くしての忍者どうしの対決は、めちゃくちゃ燃えます。白土三平のマンガは大人になって読み返しても十分面白いし、「忍者武芸帳」になると、もう文学と呼んでもなんら差し支えのないものです。赤影の場合は、空飛んだり、光線みたいなの出したりとか、ちょっとルール違反なところはあったけど、”巨大怪獣対赤影”という圧倒的不利な状況は、異常に興奮したもんだ。この最大の危機を、白影・青影とのチームワークと忍術で逆転していくってとこが、赤影の一番面白いとこなんです。

 赤影は東映京都テレビの製作だけど、東映東京撮影所でもこれとほぼ同時期に、スペースオペラの傑作「キャプテンウルトラ」を製作している。この2作品で、東映は本格的に怪獣ブームに参戦した。続く「ジャイアント・ロボ」では実写巨大スーパーロボットという分野を開拓し、円谷プロに対抗することになる。しかし東映は、ヒーローを描くのは得意だったけど、イマイチ魅力ある怪獣を作り出すことが出来なかった。怪獣映画からスタートした東宝円谷プロとは、ちょっと事情が違ったんだね。

雲間犬彦、猿彦 演じるは、名バイプレーヤー二見忠男

異国のペドロ兄弟を演じたのは泣く子も黙る大泉滉

魔風雷丸を演じた汐路章。右は花粉道伯。す、すごい

赤影最強の敵、甲賀幻妖斎。演じるは天津敏

 怪獣ブームの終息とともに、東映は再び得意の等身大ヒーローへと路線を変更する。そして現在まで綿々と続く仮面ライダーや戦隊物を世に送り出し、一連の子供文化を形成していくことになる。仮面ライダーにキカイダー、バロム1にイナズマン、どれも大好きで夢中になったよ。でも、僕らは、戦国の世を駆けぬけた3人のあの”影”たちの姿を決して忘れることはないでしょう。

♪きら〜りと〜光る〜涼しい目〜♪ うん。赤影は、ほんとにとっても涼しい目をしてた。

でた。青影の”だいじょーぶっ”。両手バージョンもあるぞ。練習しよう!

木下籐吉郎の軍師、竹中半兵衛

織田信長。根來篇に登場

仮面の下はこんな顔だよ

(2000/6)