怪獣の部屋

18.大映幻想&怪奇映画編

第1作 1966/4公開

第2作 1966/8公開

第3作 1966/12公開

その造形は、埴輪をもとに造られた

 問題は角度だ。僕の心の師、まんが家みうらじゅん氏は次のように語った。

 「怪獣体験は実際には不可能なのか?いや、ボクは京都で育った子供時代、京都駅近くの教王護国寺(東寺)で体験したのだ。静まり返った堂内、五大尊像のダイナミックな迫力に圧倒された。巨大仏を見上げる角度はまさしく怪獣体験そのものだったのである。」

 そう。見上げる角度。これこそ怪獣の命です。これ基本。この基本を忘れて造られた怪獣映画は、絶対に心に残りません。そして、その基本がしっかりと守られているのが、大映の”大魔神”3部作です。

 大魔神は、最後に魔神となって暴れ出すまでは、穏やかな顔つきの武神像の姿で山などに祭られてる。この武神像の場面で、もう僕らはゾクゾクしてくるんだ。その”きっと動くに違いない”という雰囲気でね。この雰囲気こそが、”見上げる角度”という意味です。

こっち見るなよ、見るなよ、見るなって。うわーっ。

めちゃコワーっ。ごめんなさい。もうしませーん。

 大魔神シリーズは1966年に3作が立て続けに作られ、それ以降続編はない。この3作は、ドラマの質も高いし、特撮も当時の最高レベルで素晴らしいし、ちょっと惜しい気はする。けど「大魔神の息子」とか作られると困っちゃうんで、よしとしときましょう。

 大魔神のあと、大映は妖怪シリーズをこれまた3作一気に作ってしまう。これらの作品は、ガメラシリーズの伴映などで、当時の子供達を恐怖のどん底に叩き込んだ。大映は、大魔神や怪奇もので、明るい東宝特撮とは一味違った特撮路線を作り始めてたんだ。

 1966年1月、TBSの日曜夜7時タケダアワーで、あるテレビ番組の放映が開始された。円谷プロが満を持して放った”ウルトラQ”である。毎週TVで怪獣が見られる。これは当時の子供達にとっては大事件だった。日本中に怪獣ブームが巻き起こった。そしてこのブームに更に油を注いだのが、同年ゴールデンウィーク公開の「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン/大魔神」の二本立て興行だったのです。怪獣ブームの立役者が、本家東宝じゃなかった、というのはちょっとおもしろいでしょ。

第1作 1968/3公開

第2作 1968/12公開

第3作 1969/3公開

1968/12公開(楳図かずお原作!)

 第一次怪獣ブームの頃、大映は東宝とがっぷり四つに組んでいた。世界に誇る東宝特撮技術陣に、正面から戦いを挑んでたんだ。そして決して負けてはいなかった。大映は、第二次怪獣ブームのさ中の1971年12月に倒産する。大魔神や、妖怪シリーズを世に送り出した大映京都撮影所は、静かにその歴史に幕を下ろした。もし大映がこのとき倒産の危機を乗り切っていたら・・。夏休みとかに、きっと”大映ガメラ祭り”が観られてたことでしょう。

1968/4公開 怖いけど綺麗です

1949/7公開「虹男」より 今見たい映画ナンバーワン

1951/2公開

(2000/5)