怪獣の部屋

12.恐竜編

ブラキオサウルス(”ジュラシックパーク”より)

ウルトラサウルスの前脚。で、でかい・・

われらのバイブル

 「今からおよそ200万年前、恐竜やブロントザウルスなどが全盛を極めていた時代−学問的にはジュラ紀というのですが−その頃から次の時代白亜紀にかけてきわめて稀に生息していた、海棲爬虫類から陸上獣類に進化しようとする過程にあった中間型の生物であったとみて差し支えないと思われます。仮にこれを大戸島の伝説に従ってゴジラと呼称します。」

 この説明を聞いて僕らはひっくり返った。ちょ、ちょっと山根博士、あんたそんなめちゃくちゃな説明したら博士号剥奪されまっせ。しかも国会で。

 昭和29年公開の第1作目「ゴジラ」のなかの1シーンのことである。なぜ山根博士はこんなでたらめな説明をしたのか。理由は次の2つが考えられる。1つめはわざと架空の地質史を設定していた場合。つまり恐竜の全盛期が200万年前だとすると人類の祖先と共存していたということになり、大戸島伝説ともなんとかつながる。2つめは脚本家がどうせ誰もそんな細かいとこまで聞いちゃねえだろと適当こいてしまった場合。考古学・地質学に詳しい香山滋原作にあっては多分前者で間違いないとは思うんだが、もし後者であったなら、それは見くびり過ぎってもんですぜ旦那。だって僕らはそんな言葉尻にもぴくっとくるくらい恐竜が大好きなんだからね。

たまりませんなあ。オウムガイにチョッカクガイ、痺れるぜい

僕の最も好きな恐竜のひとつディメトロドン(右)

 先カンブリア紀(中略)デボン紀石炭紀ペルム紀三畳紀ジュラ紀白亜紀。歴史の教科書の年表は、何回見ても覚えられなかったけど、古生代から中生代の年表なら頭の中に完全にインプットされてる。だいたい言葉の響きからいいよね。ジュラ紀ですよ、じゅらき、じゅらき。時々口に出して言ってみたくなるでしょ。

 僕が最初に出会った恐竜本は最上段右の「なぜなにきょうりゅうと怪獣」(小学館)という小学校低学年向けの図鑑です。僕はこの本が異常に好きで、何時間でも眺めていられた。ここに掲載したイラストはいずれもこの本の中からのもの。恐竜本はイラストが命ですが、これ今見ても結構いけますな。

見よこのど迫力。芸能人は歯が命、そして恐竜本は絵が命

恐竜が生きてた場合の捕まえ方。なんだか訳のわからん作戦

 恐竜研究は最も活発でエキサイティングな学問のひとつである。次々と発見される新種と続々と発表される学説。僕がミニ怪獣博士だった頃、一番大きい恐竜は?の答えはディプロドクスだったし、一番重たいのは?の答えはブラキオサウルスだった。しかし今ではスーパーサウルスやウルトラサウルスの発見でどちらも首位の座を空け渡した。空の王者はプテラノドンでなくちゃいけないはずだったのに、こないだ発見された翼竜は翼幅なんと12mで、プテラノドンを軽く追い越しちゃった。名前は”ケツアルコアトラス・ノースロピ”だめだ。もう覚えられない。昔なら一発でインプットされてたのに、俺も歳かあーっ。

 学説では”恐竜はなぜ滅んだか?”と”恐竜は温血か冷血か?”の2大テーマが、常に熱い論争を巻き起こし続けている。これ以外にも皮膚の色はこうだったとか、毛が生えてたの生えてなかったのとか、渡りをやってたとか、子育てしてたとかいろいろあるけど、一番びっくりしたのはブラキオサウルスの生活環境です。以前は、あまりにも重たいその体は水中でしか支えられないと考えられていたため、ブラキオサウルスのイラストは、水中から頭だけ出しているものがほとんどだったはずです。ところが今ではそれは完全に否定され、陸上で生活し、象のように後ろ足で立つこともあったという説に落ち着いたようです。そういうわけで映画”ジュラシックパーク”のあのシーンができました。

恐竜の足跡で遊ぶ子供。当時の恐竜本には必ず付いてた

これが始祖鳥だ。首が痛そう

あなたはこんな姿だったかも

 まあ恐竜関係の学説はころころ変わるので話半分に聞いとけば良いってこってす。

 カナダ国立自然科学博物館のデール・ラッセル氏は、恐竜が絶滅せずにそのまま進化を続けたらどうなっていたかという思考実験を行った。その結論が右上の写真、恐竜人類”ディーノサウロイド”です。なんかこんな怪物の目撃談ってなかったっけ。頭に皿のっけたら河童だね。案外人知れずどっかで進化してたりして。

(2000/4)